日本のスリップウェア陶器は17世紀以降イギリスで作られたスリップウェア陶器が原点で、 平らな粘土板にスリップで装飾したのちに型を用いて成型するという、まれな製作工程を経ています。
轆轤成形したのちにスリップで装飾した陶器も広義に解釈してスリップウェアと呼ぶようです。
トロヤン陶器
ブルガリアのトロヤン地方で今でも作られているスリップウェア陶器で、轆轤成型してからスリップで 絵付けしている。轆轤を回しながら描く独特な雫のようなデザインは多くの観光客に人気の陶器ではあったが、最近の観光業の衰退に加えてだんだん職人も高齢化で減ってきているようです。
ルーマニアのスリップウェア皿
ヨーロッパ各地で多くのスリップウェア作家が活動していますが、生活雑器というよりは飾り皿であまり魅力あるものはありませんでした。
沖縄のスリップウェア陶器
沖縄市の窯で作成されたスリップウェア皿です。沖縄の土に拘り、研究を重ねて化粧土を作り、沖縄の明るい風土を表現しています。
この窯の作品も轆轤成型で作られています。
2種類以上のスリップを重ね掛けする器は墨流し(マーブリング)と言ってスリップウェア陶器とは別にしているようです。
堂前守人さんの作品
堂前さんの作品はスリップウェアではありませんが、釉上加彩技法とスリップを使ったイッチン技法を追わせた独特な雰囲気を持った陶器です。
函館で製作している人気の作家さんだそうです。
生楽陶苑の在る宮崎県三股町に「シブースト」が人気の洋菓子店があり、パリッと焼き上げた、とろけるような甘さが魅力で
午前中に売り切れてしまうそうです。(シブーストはパイ生地の上にクリームをのせ焼き上げたフランスの洋菓子)
写真
スリプウェアパン皿(生楽陶苑)
「シブースト」(ブールミッシュ店)
生楽陶苑さんは宮崎県南西部の三股町長田に窯を構えて制作しています.10キロの峡谷の長田狭が、後方に大谷山が聳えるる鰐塚山地系の山間にあります。
水の流れ、鳥のさえずり、新緑、紅葉と自然豊かな地域です。この自然豊かな環境を求めて複数の陶芸作家が窯を構えています。近くに県道が通っていますが
この辺りを「アトリエロード」と呼んでいるそうです。
町内には多くの「河童伝説」があるそうで近くの公園には「アトリエロード」の作家たちが作成した陶製の河童が置かれていて探す楽しみもあるようです。
公園内の陶製河童(生楽陶苑制作)
「生楽陶苑」(宮崎県)のスリップウェア陶器
宮崎県は75%が山地の山岳地県です。豊かな森と水、太陽に恵まれた自然豊かな地域です。
この自然豊かな山間で窯を開き50年近く作陶を続けている「生楽苑」、自然との調和を大切にとの思いから現地の天然の原料を
使用しています。化学が進み成分分析により数多くの釉薬が購入できる時代ですが、それぞれの地方で作られる釉薬とは成分に差があり、
性質も釉表現にも違いが出ます。「生楽陶苑」で作られる作品はこの土地だけから生まれる唯一無二のものです。
園田空也さんはこの自然豊かな地と澄んだ空気の中で、心を込めた作品を生み出しています。「使い勝手のよい器」「現代の生活空間にマッチした器」
「伝統の技術に基づいた器」「心を豊かにする器」です。
伊藤丈浩さんのスリップウェア陶器が入荷いたしました。
益子で作陶されている伊藤さんの作品は二色の化粧土が混じり合ったグラデーションの模様が 美しく、今、とても人気のある作家さんです。
「スリップウェア」とはイギリスの古陶で、器の表面をスリップと呼ばれる泥状の粘土で装飾した陶器のことです。
「日本のスリップウェア」は伝統の技術を継承しつつ、新しい文様、色彩、デザインで現代の生活に楽しさを与えてくれます。全て手作りのため、表情が異なる一点ものとなっています。
小島鉄平「蛸の大皿」
藻岩窯の紹介
藻岩窯
https://sakurayamayudo.web.fc2.com/
北海道札幌の藻岩山の麓にある窯元さんです。
開窯された谷内丞氏は常滑、益子、湯町、丹波、小石原,小鹿田、ヨーロッパ6か国を訪れマジョリカ、イスラム陶器、 またイギリスのコーンウォールでスリップウェアの研究もされています。(リーチ工房?)
ペルシャ陶器、マジョリカ、中東の焼き物を象徴したような天空のトルコ釉の搔き落としの作品は魅力的です。装飾、色彩を
表に出して西欧的な雰囲気の中に和を含んだ作品はバーナードリーチの東と西の文化融合を目指した作品と共通理念がある ような気がしています。
2代目の葉原氏の作品は谷内氏の技術を継承しながらも、大地の緑、唐三彩,遼三彩、李朝等の東の伝統を大事にして
装飾性を少し抑えているように感じられます。東と西の陶器文化を現代生活にマッチさせた作品は素晴らしいと思います。